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学会からのお知らせ
30周年記念シンポジウム「経営機能としての広報をめぐる期待と現実」開催報告
日本広報学会では、30周年記念シンポジウム(第2回)「経営機能としての広報をめぐる期待と現実~経営者インタビュー調査に基づく広報の成長モデル~」を開催いたしました。
本シンポジウムでは、2025年度に実施した「経営者インタビュー調査」の報告と合わせて、広報実務の先頭に立つ広報担当役員をパネリストに迎えたパネルディスカッションを実施しました。
■ 開催概要
日時:2026年3月17日(火)17:30~19:00シンポジウム/~20:00(懇親会)
会場: 上智大学四谷キャンパス 2号館4階401教室、懇親会:5階 教職員食堂
参加費:無料(吉田秀雄記念事業財団の助成により)
■ プログラム
1. インタビュー調査結果発表(30分)
発表者:上智大学文学部 准教授 国枝智樹 氏
2. パネルディスカッション(60分)
モデレーター:日本広報学会 前理事長 柴山慎一 氏
パネリスト:
• (株)商船三井 執行役員CCO 園田早苗氏
• 味の素(株)執行理事グローバルコミュニケーション部長 小笠原和子氏
• 上智大学文学部准教授 国枝智樹氏
3. 懇親会(50分)
軽食を交えた意見交換会
■ 主催・協賛
主催:日本広報学会
共催:上智大学メディア・ジャーナリズム研究所
協賛:吉田秀雄記念事業財団
特別協賛:アサヒグループホールディングス
後援:経済広報センター、日本パブリックリレーションズ協会、公共コミュニケーション学会、月刊「広報会議」
■ 開催報告
当日は定員250名の会場がほぼ満席となり、多くの皆様にご参加いただきました。
本シンポジウムでは、研究と実務の双方の視点から、広報を「経営機能」として捉える議論が展開されました。広報の現在地と課題、そして今後の方向性について、多くの示唆が得られる機会となりました。
第1部では、上場企業20社の経営者インタビューをもとに、広報に対する期待と現実のギャップが提示されました。広報は95%以上の経営者が「経営機能」として認識している一方で、戦略関与、組織位置づけ、活動理解、成果評価の4領域においてギャップが存在することが明らかになりました。 特に、広報が戦略決定後の発信業務にとどまり、企画初期から関与できていない点は、多くの企業に共通する課題として指摘されました。
広報の経営機能化は、①必要性認識、②トップ主導、③制度化、④戦略参画という4段階で進展する仮説が提示され、広報が経営の中枢に組み込まれていくプロセスが整理されました。このフレームは参加者にとって自社の現在地を測る有効な指標となりました。
第2部のパネルディスカッションでは、実務家と研究者が登壇し、より実践的な議論が展開されました。味の素、商船三井といった異なる業種の視点から、広報の役割や組織設計、IRとの連携、社会との関係構築について多角的な意見が交わされました。広報は単なる情報発信ではなく、経営の意思を社会に翻訳し、同時に社会の声を経営にフィードバックする「双方向の機能」であるという認識が共有されました。
中でも印象的であったのは、「最終的には広報機能が不要になる組織を目指したい」という発言でした。これは、広報部門に業務を集約するのではなく、全社員が自社の価値を理解し、自律的に発信できる状態、すなわち広報マインドが組織全体に浸透した理想像を示しています。この視点は、広報の高度化の先にある「組織そのものの進化」を示唆しており、本シンポジウムの議論を象徴する論点となりました。
本シンポジウムを通じて明らかになったのは、広報はもはや周辺機能ではなく、企業価値や社会的信頼を左右する中核的な経営機能であるという点です。一方で、その実装には組織設計、人材育成、評価指標など多くの課題が残されています。今後は、各企業が自らの段階を見極めながら、広報の経営機能化をいかに具体的に進めていくかが問われる段階に入ったと言えます。




