日本広報学会について

理事長挨拶

本学会の設立25周年を迎えた2020 年は、新型コロナウィルス感染症という想定外のパンデミックに翻弄されることとなりました。これは、広報やコミュニケーションの領域においては、イノベーションのきっかけともなり、研究対象の変化と拡がりを意味することにつながりました。日本広報学会は、企業・行政・団体から非営利組織まで、経営体の広報・コミュニケーション活動を研究の対象としています。この分野の深化・発展、さらには広報・コミュニケーションによる経営体の価値創造につなげるべく、理論と実践の両面から研究・情報発信、さらには会員に対する啓発活動など、さまざまな活動を行い発展してきております。

広報とは経営そのもの、コミュニケーションとは経営体の活動そのものとも言われます。企業や行政を代表とする組織は、様々の情報を広聴を通じてインプットし、インターナル・コミュニケーション(組織内広報)活動を通じて、組織内で付加価値を高め、付加価値の高まった情報を広報を通じてアウトプットしています。このような広報・コミュニケーション活動によって、あらゆる経営体はその存在意義を担保しています。

広報・コミュニケーションの領域は、研究の面からも、マネジメント実践の面からも、総合的かつ学際的です。関係する学問領域も経営学、マーケティング、組織論、情報行動論、言語・メディア・ジャーナリズム、さらには国際地域研究などと広範囲です。組織経営の面でも、トップマネジメント、広報・IR部門、マーケティング部門、人事・総務部門、情報システム・ナレッジ部門など多くが関係し、それだけに、多面的なアプローチが求められる領域です。

こうした領域の多様性から、幅広い専門、職種からの会員で成り立っていることが特色です。関連する研究を行う大学などの研究者、所属する組織の広報・コミュニケーション活動を実践する方、あるいは関連サービスを提供するPR会社やメディア関連事業者の方など、多様なバックグラウンドを持った会員からなり、数百人の個人会員に加え、数十社の法人が法人会員として活動しています。このことが、実務者と研究者の幅広い情報交換と議論を可能にしています。

最近の情報・メディア環境は大きく変化しています。その中で、あらゆる経営体に対して、より的確な広報・コミュニケーションにつながるイノベーションが求められています。同時に、適切なリスクマネジメントも求められ、これら両面からのステークホルダーとの関係性の再構築が必要となってきています。

日本広報学会では、広報・コミュニケーション分野の理論・実践の両面からの発展に向け、先進事例の交流や分析、仮説や理論の提示などの研究・教育活動を展開しております。企業・行政、諸団体、NPO/NGOなどで広報・コミュニケーション活動に携わる皆さま、また大学や研究機関で、組織の広報や社会的コミュニケーション、情報社会の諸現象に関心をお持ちの皆さまの、幅広い参画をお待ちしております。

柴山 慎一
日本広報学会 理事長