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情報流通構造の事例研究会(12月23日)実施レポート
12月23日に開催された情報流通構造の事例研究会では、
これまで継続してきた「検索エンジン」「SNSアルゴリズム」「デジタル情報流通構造」に関する議論を総括し、
アルゴリズムと人間の認知・感情・行動が結合した現代的な情報流通の特性について整理を行った。
冒頭では、デジタル化によって情報量は飛躍的に増大した一方で、
「同じ情報を同時に共有する公共空間」が希薄化している現状が確認された。
新聞の一面やテレビの全国中継といった共通体験を前提とした情報環境から、
個別最適化された情報提示へと移行した結果、同一の事象であっても、
受け手によって見える情報や文脈が大きく異なる構造が生まれている。
議論では、情報流通を「一次情報(企業発表・オウンドメディア)」「二次情報(取材・記事化・ニュース転載)」
「三次情報(SNSでの拡散・引用・再解釈)」というレイヤー構造で捉え直した。
そのうえで、炎上事象などに見られるように、切り取られた断片情報が感情と結びつき、
瞬時に拡散・再編集される過程が、世論形成に大きな影響を与えている点が共有された。
参加者からは、「アルゴリズムは万能ではなく、リアルな人間関係や生活文脈には及ばない」
「情報の拡散には数理的評価だけでなく、心証や感情が強く作用する」「デジタル群集心理が特定の方向に働くことで、
拡散が加速・偏在する」といった指摘があった。
アルゴリズムは人を直接支配する装置ではなく、
人間の認知バイアスや感情と結合することで影響力を持つ点が確認された。
また、フィルターバブルとエコーチャンバーの違いについても整理が行われた。
前者が情報への接触範囲の縮小を指すのに対し、
後者は反応が返ってくる環境そのものが自己強化的に循環する構造であり、
人為的に設計された装置というよりもエコシステムとして理解すべきであるとの認識が共有された。
本研究会では、公共空間が消失したのではなく、
分散・断片化した形で存在しているという視点を提示した。
異なるトライブが完全に交わらないのではなく、
生活文脈や役割共有といった限定的な接点において重なり合う領域が、
現代的な公共空間として機能している可能性が示された。
本定例会をもって、当研究会における一連のアルゴリズム・情報流通構造研究は一区切りとし、
今後は新たな事例や変化を踏まえた議論へと接続していく予定である。
以上
(田代順)
