学会の活動
研究会報告
概要Outline
第96回広報塾開催レポート
2025年7月2日、第96回広報塾がオンラインで開催され、
作家・批評家の物江潤氏を迎えて「SNS選挙という罠」という講演が行われた。
物江氏は兵庫県知事選や都知事選を例に、SNSがもたらす「ストーリー化」の構造について解説。
候補者本人よりも、支援者やインフルエンサーによる熱狂的な発信が選挙を駆動する現象を指摘した。
SNSでは、ユーザーは観客ではなく参加者となり、
「敵を倒す」「仲間と連帯する」「真実に気づいた自分」という物語に巻き込まれていく。
こうしたストーリーは人々の思考を停止させ、ファクトチェックすら無力化されていくという。
講演ではさらに、戦後思想家・吉本隆明の「自立の思想」が紹介され、
情報に翻弄されず「自分の持ち場」から判断することの大切さが説かれた。
広報・PRの現場でも、熱狂や空気に流されない姿勢が求められている。
■講師プロフィール|物江 潤(ものえ・じゅん)
作家・批評家。1985年福島県喜多方市生まれ。早稲田大学理工学部社会環境工学科卒業。
東北電力、松下政経塾を経て、政治・社会・教育について執筆活動を続けている。
SNSがつくり出すストーリーや社会に漂う「空気」に巻き込まれず、
現場や経験を出発点とする「足元の思想」を軸に社会の変化と向き合う。
自己発信の手段としてSNSは用いず、
書籍や現実に触れた言葉が届くメディア空間を重視してい
■ 物江氏新著紹介
『SNS選挙という罠――自分の頭で考え直すために』(平凡社新書)
SNS時代の“民主主義の危機”に鋭く切り込む話題作。
(事業委員会:田代順)