学会の活動

日本広報学会賞

概要Outline

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2016年度(第11回)日本広報学会賞決定

2016年度は第11回となるが、本学会会員が2015年4月1日から2016年3月31日までに公刊した図書・論文で自薦、他薦で応募した作品に加えて『広報研究』第20号収録の論文を候補作品とした結果、図書2点、論文10点を選考対象とすることにした。なお、募集の締め切り日は2016年6月20日である。

2016年度学会賞審査委員会は、第1回委員会を7月12日に開催し、昨年度同様の審査方針にて選考することとして作品の読み込みに入った。第2回委員会を9月16日に開催し、各委員が個別に提出した評価表に基づいて慎重に審議を行い、以下の通りに決定した。理事会の承認を経て、10月29日の第22回研究発表大会の冒頭で発表し受賞者の表彰を行った。

審査結果

学術貢献賞

該当作品なし

優秀研究奨励賞

該当作品なし

研究奨励賞
  • [論文]和田仁著
    「パブリック・ディプロマシーと軍のパブリックアフェアーズ -2011年東日本大震災時のトモダチ作戦の事例研究―」

    (「広報研究」第20号2016年3月)
  • [論文]大知正直・長濱憲・榊剛史・森純一郎・坂田一郎著
    「口コミ指数による事例類型化に基づく複数メディアのヒット前の露出を先行指標とした情報拡散過程の分析」

    (「広報研究」第20号2016年3月)
教育・実践貢献賞

[著書]清水正道監修
三浦健太郎・阪井完二・黒田明彦・北見幸一・末次祥行・戸上摩貴子著 『戦略思考の広報マネジメント』
(日経BPコンサルティング2015年4月)

受賞作品の講評

研究奨励賞講評

和田仁著
「パブリック・ディプロマシーと軍のパブリックアフェアーズ-2011年東日本大震災時のトモダチ作戦の事例研究―」
(「広報研究」第20号2016年3月)

パブリック・ディプロマシーやパブリックアフェアーズは、これまで当学会での研究の蓄積の希薄な領域である。
本論文は先行文献を丹念に検証し、広報の領域を超え、多面的視点から整理した部分が大いに評価できる。また、軍隊というハードパワーを代表する存在のもつソフトパワーとしての側面に焦点を当てたことは、イラクや南スーダンなどの自衛隊の海外活動にとっても大いに示唆に富む視点であり、問題提起として新鮮に感じられた。
後半部において米軍のトモダチ作戦の事例を取り扱っているが、丹念な基礎資料の収集に基づく分析は評価できるものの、理論の一般化という点で今一歩の踏み込みが欲しかった。

大知正直・長濱憲・榊剛史・森純一郎・坂田一郎著
「口コミ指数による事例類型化に基づく複数メディアのヒット前の露出を先行指標とした情報拡散過程の分析」
(「広報研究」第20号2016年3月)

口コミ指数という新たな概念を使い、SNS時代の情報拡散を定量的に分析し、口コミと売り上げとの関係を明らかにしようとの論文である。この領域はこれまで定性的に取り上げられることが多かったが、本論文は本格的な統計分析手法を駆使しており、サンプルの取り方も限定条件をおさえ、論文としての完成度も高い。
取り扱ったメディアは一部にとどまっており、研究途上の報告の域にとどまっているものの、当学会でもこのようなアプローチが今後さらに充実すべきとの観点から、その将来性を評価し、今後の積み上げを期待して奨励の意味で受賞作とした。
タイトルのわかりにくさ、論述の難解さが見られる、平易に表現することに努力してほしい。

教育・実践貢献賞講評

企業広報戦略研究所著
『戦略思考の広報マネジメント』
(日経BPコンサルティング2015年4月)

企業の広報力を8つの指標から「オクトパスモデル」として評価する独自のアプローチの概要を紹介しつつ、実務家のインタビューを通じ、企業広報の現状を要領よく説明している。読みやすくまとまっており、新任広報担当や学生に興味をもってわかりやすく理解を促す入門書の役割を担っている。また、広報担当者が自社の広報力についてその特質を把握するガイドとしても役立つと思われる。
オクトパスモデルについては、実務への効果に期待する一方、アカデミックな研究の成果というより、実務経験に基づく項目出しによって得られたものではないかとの意見もある。今後、先行研究との比較や統計に基づく検証などを通じより精緻に説得力を磨き上げることを期待したい。