学会の活動
研究会報告
概要Outline
広報部門の生成AI導入率は77%で倍増以上|2025年は大きな転換点に(第2回 広報における生成AIの活用実態調査 報告書)
生成AIを活用した広報研究会
主査 雨宮徳左衛門(プラップノード株式会社)
生成AIは、いまやあらゆる産業分野に大きなインパクトをもたらしている。一方で、広報領域における活用実態については、信頼性の高い調査・研究が十分とはいえない状況にある。私たち「生成AIを活用した広報研究会」では、そうした空白を少しでも埋めることを目的として、広報部門を主たる対象に調査を実施した。調査は2025年10月から11月にかけてインターネットアンケート形式で行い、国内の企業・団体の広報担当者、PR代理店スタッフ、広報研究者などから104件の有効回答を得た。設問は、生成AIの導入状況、利用業務、接触頻度、生産性への寄与、導入・定着を阻む要因など、計11項目で構成している。
また、本調査は、第1回調査(2024年)と同時期・同規模で、一定程度共通した対象リストを用いて実施する定点調査として設計されている。そのため、単年の状況把握にとどまらず、前回との差分を通じて、広報領域における生成AI活用の変化や進展を、より多面的に捉えることを目指している。
調査結果
生成AIの導入状況
今回の調査から、広報部門において生成AIの導入が着実に進んでいることが明瞭に見てとれる(図1)。「定着している」は18.3%、「導入し、定着を模索している」は58.7%となっており、両者を合わせた導入済み層は77.0%に達した。これは、生成AIが一部の先進的な取り組みにとどまらず、多くの企業で実務への組み込みを前提に活用され始めていることを示している。
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前回は「定着している」と「導入し、定着を模索している」の合計が37.2%であったのに対し、今回は77.0%となり、導入済み層は大幅に拡大した。一方で、「認知している」にとどまる層は45.5%から13.5%へと大きく低下しており、生成AIが「知っている技術」から「実際に使う技術」へと位置づけを変えたことがうかがえる。
接触頻度
導入者の生成AIの接触頻度をみると、「常に」と「1日数回」をあわせたデイリーユース層は導入者の70.0%を占めており、急速にAIとの協働が進んでいる様子がうかがえる。生成AIの活用が関心や試行の段階にとどまらず、現場で反復的に使われる実践ステージへと移行していることを示している。
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生産性評価
導入者の評価の平均点は2024年の6.67点から2025年は7.53点へ上昇しており(表1)、2025年のほうが高い。あわせて、8点以上の比率は37.8%から62.5%へ増加している一方、4点以下の低評価は15.6%から5.0%へ減少しており、回答分布は全体として高評価側に急速にシフトしている(図3)。
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註記:本アンケートで指す「生産性への貢献度」とは、生成AIが広報業務において、タスクの効率化や作業時間の短縮、精度の向上、創造性の向上などにどの程度貢献しているかを示し、10段階で10を最高とし、1を最低とする
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これら変化を踏まえると、この1年は広報領域における生成AI活用にとって、単なる普及の進展をこえた大きな転換点であり、生成AIが関心や試行の対象から、実装と運用を伴う現実的な業務基盤へと移行し始めた年として位置づけられると考える。
利用業務
今回の調査では、生成AIの活用場面として、引き続き文章作成やアイデア出しが中心であることがわかった。上位は「プレスリリース類の作成」37件(46.3%)、「コピーやリリースタイトルの案だし」35件(43.8%)、「企画の壁打ちや案だし」35件(43.8%)で、前回調査でも同様の項目が上位に並んでいた。広報業務において、生成AIはまず「書くこと」「考えること」を支えるツールとして定着してきたといえる。
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また、前回と比べると、「議事録の作成」は11件(24.4%)から29件(36.3%)へ、「翻訳」は3件(6.7%)から14件(17.5%)へと伸びており、生成AIの活用が日常的な実務処理にも広がっている様子が見られた。一方で、「記事の要約や情報収集」は前回22件(48.9%)、今回22件(27.5%)と件数は変わらなかったが、順位や割合では相対的に低下した。これは利用が減ったというより、今回調査で選択肢を増やしたことで、生成AIの使い方がより細かく把握されるようになったためと考えられる。
実際、今回調査では「広報戦略づくり」13件(16.3%)や「SNSのリスニング分析」3件(3.8%)、「広報活動の評価」1件(1.3%)など、前回には十分に現れていなかった用途も確認された。全体としては、生成AIの利用が要約や情報収集にとどまらず、原稿作成、発想支援、会議記録、翻訳などへと広がり、広報実務のさまざまな場面に浸透し始めていることがうかがえる。
導入や定着への不安要素
全体でみると、生成AIの導入・定着に関する不安は、「正確性への不安」56件(53.8%)、「機密性への不安」54件(51.9%)、「知財侵害への不安」44件(42.3%)に集中しており、企業における生成AI活用の課題が、単なる新しいツールへの抵抗感や操作性の問題ではなく、出力内容の信頼性、情報管理、権利処理といったガバナンス上の論点として認識されていることがわかる(図4)。また、「リードする人材不足」32件(30.8%)や「コンテンツなどから独自性や人間味が薄れることへの不安」27件(26.0%)も一定の水準にあり、生成AI活用の不安が、社内の推進体制や運用設計、さらには広報コンテンツの質や自社らしさの維持にも及んでいることがうかがえる。
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前回との比較で捉えれば、2024年の正確性(52.1%、1位)、機密性(44.6%、2位)、知財侵害(43.8%、3位)であり、上位3項目は変わっていない。とくに機密性への不安は44.6%→51.9%で7.3ポイント上昇しており、生成AI活用が広がる中でも、広報実務では情報管理への慎重姿勢がむしろ強まっていることがうかがえる(図5)。
一方で、正確性への不安は52.1%→53.8%で1.7ポイント増と高止まり、知財侵害への不安は43.8%→42.3%で1.5ポイント減とほぼ横ばいであり、主要な懸念領域そのものは大きく変わっていない。
2024年に4位だったリードする人材不足は、41.3%→30.8%で10.5ポイント低下し、順位も4位→4位ではあるものの存在感はかなり弱まった。また、業務適応への不安は31.4%→22.1%で9.3ポイント低下し、5位→7位、導入への低い意欲も20.7%→11.5%で9.2ポイント低下し、6位→10位となっている。このため、2025年は「そもそも導入したいか」「社内で推進できるか」といった初期障壁よりも、導入後にどれだけ安全に使えるかに関心が移っていると整理できる。
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今回の調査に、クロス集計をかけて「導入前」と「導入後」を分けてみると、不安の性質は明確に異なる(表3)。導入前では「機密性への不安」13件(54.2%)と「金銭的なコストの高さ」10件(41.7%)が上位であり、導入可否を判断する際のセキュリティや費用面の懸念が中心となっている。一方、導入後では「正確性への不安」47件(58.8%)が最も高く、「機密性への不安」41件(51.3%)が続いており、実際に使う中でAI出力の信頼性がより大きな課題として認識されていることがわかる。また、「リードする人材不足」16件(20.0%)や「コンテンツなどから独自性や人間味が薄れることへの不安」14件(17.5%)が導入後に相対的に目立つことから、不安の重心は導入判断から、活用を支える体制づくりや表現品質の維持といった運用上の課題へ移っているといえる。
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社内規定
生成AI導入に関する社内規定が「ある」とする回答は、前回の51.1%から今回68.8%へ増加し、社内ルール整備が着実に進んでいることがわかる。「ない」は31.3%まで低下しており、生成AI活用が試行的な導入から、規定を伴う組織的な運用へ移りつつあることが示されている。
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まとめ
本調査から、2025年の広報領域における生成AI活用は、前回調査時点と比べて明らかに新たな局面へ進んだことが確認された。導入済み層は77.0%に達し、接触頻度も高まり、生産性評価も上昇していることから、生成AIはすでに一部の先進的な試みにとどまらず、広報実務の中で反復的に使われる現実的な業務基盤になりつつあるように推認される。
他方で、導入や定着に伴う課題もより具体的になっている。全体としては、正確性、機密性、知財侵害への不安が中心であり、導入前にはセキュリティやコストが、導入後には出力の信頼性や運用体制、人材不足、さらにはコンテンツの独自性や人間味の維持が課題として意識されていた。これは、生成AI活用の論点が単なる導入可否の問題から、いかに安全に、適切に、かつ自社らしさを損なわずに運用するかという、より実践的なマネジメント課題へ移っていることを示している。社内規定の整備が進んでいることも、こうした変化と歩調を合わせた動きといえる。
以上を踏まえると、2025年は広報領域における生成AI活用にとって、単なる普及の進展を超えた転換点であったと位置づけられる。今後の焦点は、「導入するかどうか」ではなく、「どの業務で、どのようなルールと体制のもとで活用し、どのように自社らしい広報品質へ結びつけるか」に移っていくと考えられる。生成AIは広報実務の効率化を支えるだけでなく、広報の仕事そのものの設計や役割の再定義を促す存在になりつつある。
