学会の活動

日本広報学会賞

概要Outline

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2014年度(第9回)日本広報学会賞決定

2014年度(第9回)日本広報学会賞は、9月5日に審査委員会(委員長 宮部 潤一郎)を開催し、学会賞授与に関する審査を行い、以下の通り受賞作を選出した。
同学会賞は、第20回研究発表全国大会(10月18日、19日 於東海大学)の第1日目冒頭に清水学会理事長から発表され、表彰が行われました。

審査対象

本学会会員が、2013年4月1日から2014年3月31日までに公刊した図書・論文で自薦、他薦によるもの、および『広報研究』第18号収録の論文を対象とした結果、図書2点、論文7点、計9点の応募がありました。部門別の応募は以下の通りです。

  • 学術貢献賞への応募 1
  • 優秀研究奨励賞への応募 1点
  • 研究奨励賞への応募 7点
  • 教育・実践貢献賞への応募 2点

(複数の部門に応募した作品があるため、応募作品数と部門別応募作品数は一致しない。)

審査結果

学術貢献賞

該当作なし

優秀研究奨励賞

該当作なし

研究奨励賞

次の2作品とする

  • [論文] 須田比奈子著「広報研究の発展におけるエクセレンス理論の貢献」、広報研究第18号2014年3月
  • [論文] 伊藤直哉著「自治体広報測定をどのように行うべきか ―佐賀県武雄市のFacebook広報評価を中心として―」、広報研究第18号2014年3月
教育・実践貢献賞

該当作なし

受賞作品の講評

日本広報学会賞審査委員会

今年度の応募作の中には他にも意欲的な論考が存在したが、慎重な審議の結果授賞のレベルに達しないと判断された。しかし、対象となったすべての作品の執筆者各位の広報研究に向ける努力に敬意を表するとともに、更なる研鑽を積まれ高い水準の研究成果を目指されることを期待したい。

研究奨励賞受賞作品の講評

須田比奈子著
「広報研究の発展におけるエクセレンス理論の貢献」
広報研究第18号2014年3月

須田氏の論文は、James Grunig等による「エクセレンス理論」の生成、発展、応用に関して包括的にこれまでの研究を整理し、体系的にまとめたものである。
パブリック・リレーションズ活動の理想的なモデルといえば、「対称型双方向コミュニケーション」であり、わが国でも広報・PRに関連した多くの文献で紹介され、広報関係者の間では広く知られている。多くの広報・PR関係者の広報観はエクセレンス理論に基づくものであり、その広報・PR関係者に対するエクセレンス理論による影響は、わが国では支配的であると思われる。それにもかかわらず、エクセレンス理論をめぐる多様な議論、その意義と限界、今後の発展方向について紹介する文献等は、日本では極めて少ないというのが現状であろう。本論文は、エクセレンス理論をめぐる議論、意義や限界、今後の研究方向や課題について、様々な文献を通じて丹念に整理した貴重な成果と認められる。
本論文は、クライシスマネジメントやレピュテーション研究分野はもちろん、国際比較研究に取り組むに際しても有益な示唆を与え得るものであると思われる。また、最終節(まとめ)により、この分野に詳しくない読者にも結論がはっきりと提示されており、それぞれの読者の今後の研究活動に何らかの示唆を与えるものと推察される。
全体に生硬さは否めないが、全体像をとらえ、丁寧な論証を行っていることは好感がもて、十分に研究奨励賞に値する論文と認められる。各審査委員の評価でも他に抜きん出た評価を得ており、多くの議論を要さずに研究奨励賞の授賞を決定した。

伊藤直哉著
「自治体広報測定をどのように行うべきか ―佐賀県武雄市のFacebook広報評価を中心として―」
広報研究第18号2014年3月

伊藤氏の論文は、武雄市のフェイスブック広報評価を題材として、広報評価段階を整理し、ソーシャルキャピタル概念と接続したうえで、武雄市の広報評価のためのモデルと戦略を示している。従来の広報評価に関する理論を整理した上で評価モデルを作成し、地方自治体広報の評価設計を行った上で調査を行い、その結果の解析を広報戦略に策定に生かそうという、実践的な姿勢が見られる論文である。
広報・PRの世界で大きな課題となっている効果測定の手法に新たなアプローチを提案する論文として評価できるが、実証研究の対象となった武雄市のFacebook利用方針は自治体の中でもかなり特異な事例なので、ごく一般的な市町村において同様の結果が出るのかどうか、また、ここで提示されている3段階モデルに基づく評価をどのように行うべきものか明確な提示がないなどの指摘がなされた。しかし、ここで提示されているモデルは自治体広報の観点から見ると意欲的であり、今後の研究の深化を期待できるものとの評価から、研究奨励賞に相応しい論文と認められた。
Facebookを積極的に導入した武雄市のケースにとどまることなく、多様な自治体に適用できる効果測定の一般的な手法の開発を行うなど、今後の研究の発展を期待したい。