学会の活動

日本広報学会賞

概要Outline

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2010年度(第5回)日本広報学会賞決定

2010年度(第5回)日本広報学会賞は、10月7日に審査委員会(委員長 上野征洋副会長)を開催し、10月14日開催の第62回理事会の承認を得て、下記の通り決定いたしました。
同学会賞は、第16回研究発表大会(11月6日、7日 於京都産業大学)の第1日目冒頭に上野同賞審査委員長から発表され、表彰が行われました。

審査対象

本学会会員が、2009年4月1日から2010年3月31日までに公刊した図書・論文で自薦、他薦によるもの、および『広報研究』第14号収録の論文を対象とした結果、図書6点、論文5点、計11点の応募がありました。部門別の応募は以下の通りです。

  • 学術貢献賞への応募 3点
  • 優秀研究奨励賞への応募 3点
  • 研究奨励賞への応募 6点
  • 教育・実践貢献賞への応募 4点

(複数の部門に応募した作品があるため、応募作品数と部門別応募作品数は一致しない。)

審査結果

本学会会員が、2009年4月1日から2010年3月31日までに公刊した図書・論文で自薦、他薦によるもの、および『広報研究』第14号収録の論文を対象とした結果、図書6点、論文5点、計11点の応募がありました。部門別の応募は以下の通りです。

学術貢献賞

〔図書〕清水正道著『環境コミュニケーション—2050年に向けた企業のサステナコム戦略』
(同友館 2010年3月刊)

優秀研究奨励賞

〔図書〕北見幸一著『企業社会関係資本と市場評価—不祥事分析アプローチ—』
(学文社 2010年2月刊)

教育・実践貢献賞

〔図書〕河井孝仁著『シティプロモーション—地域の魅力を創るしごと—』
(東京法令出版 2009年12月刊)

研究奨励賞

該当なし

受賞作品の講評

(文中敬称略)

日本広報学会賞審査委員会「学術貢献賞」の授賞理由

清水正道『環境コミュニケーション--2050年に向けた企業のサステナコム戦略』は筆者が10年以上にわたって取り組んできた成果の集大成であり、社会提言の書であります。
本書の特徴は、内外で高まる地球環境問題、CSR(企業の社会的責任)活動への取り組みをさらに向上させるため、経営戦略を「環境コミュニケーション」の視点から問い直し、「持続可能性」への寄与を推進させようとするところにあります。中・長期的な視点に立ち、企業や社会の営みをコミュニケーションの視点から分析し、志の高い提言に結実させた力量は高く評価されます。
本学会における「学術貢献賞」の審査ガイドラインは「広報及び隣接諸科学の研究において顕著な貢献があると認められた業績」です。審査委員会は、このガイドラインに照らして、本書の「顕著な貢献とは何か」について討論しました。
その結果、本書は「社会的な意義の高さ、時宜にかなった提言内容など、学会の果たすべき社会的役割を担うもの」との結論に達しました。
合わせて、学術的視点からの検証も行ない、「専門用語や概念について、より正確な吟味や整理が必要」との意見もありましたが、「それをふまえてもなお貢献度が高い」と判断されたものです。

「優秀研究奨励賞」の授賞理由

北見幸一『企業社会関係資本と市場評価——不祥事分析アプローチ』は過去15年間に発生した不祥事を分類し、その分析の結果「規範逸脱行動型」の事例が、企業への負の影響が大きいことを論述したもので、クライシス・コミュニケーションの重要性など経営への提言も行なっています。これまでも不祥事に関する事例研究の論稿が多い中で、学術レベルでの分析を行なった点が優れていると評価されました。
本書は経営学の博士論文を基礎にしたもので、表現や論証に生硬さが散見されるものの、「今後、さらに成熟した成果」への期待を込めて高い評価を得ました。
また、企業社会関係資本の構造変化と市場評価との関連においては、分析が不十分との意見もありましたが、「将来的に学会の発展に貢献する」との「優秀研究奨励賞」のガイドラインに照らし期待を込めて授賞作となりました。

「教育・実践貢献賞」の授賞理由

河井孝仁『シティプロモーション——地域の魅力を創るしごと』とは筆者の記述によれば企業マーケティングの手法、そしてマネジメントサイクル、地域ブランドなどの考え方を駆使して、副題が示すように、「地域の魅力を創る」活性化策です。
筆者は、30以上の自治体の取り組みを事例として取り上げ、行政広報やシティセールス活動を総合化した「シティプロモーション」の概念と手法を丹念に説き、平易な記述で説得力のある成果を導き出しています。自治体職員、NPOメンバー、地域の課題に取り組む人々への実践の書として高く評価されました。

今回の三点は、いずれも図書でした。論文においても、注目すべき作品が少なからずありましたが、議論の結果、残念ながら、いずれも学会賞授賞には該当しないと判断されました。次年度も、多くの優れた論文や図書がノミネートされることを期待しております。

(文責:審査委員長 上野征洋)