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研究会報告

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定例活動報告

情報流通構造の事例研究会定例報告
オンライン開催6月27日
参加者:池田、井上、太田、小山、大野、田邉、田代
今回は田邊さんの広報研究発表の動機と経緯と調査について発表した。

広報研究27号掲載:
『自治体広報が地域住民に定着するまでの伝播経路に関する研究
ー高齢者世代に置けり口コミ効果と情報格差解消への施策提言ー』
*発表は一部省略していますが、年度報告では詳細を提出します。

田邊直人さん
• 愛知県刈谷市 出身地元ケーブルテレビにて番組ディレクターとして取材活動
• 現在:名古屋圏の民放局やケーブルテレビで番組制作に携わる
• 2014年 三重大学大学院博士課程 入学 今年3月に満期退学現在博士論文を執筆中

研究動機
• ケーブルテレビ:「隣近所」の関係に近いと感じる
• 高齢者の情報格差の拡大 *情報発信者の一人として高齢者を取り残すことへの懸念
⇒情報格差解消の手がかりを見出してICT社会における施策の提言を行いたいと考える

研究方針
• 調査方法:社会調査
• 研究対象:三重県内でも四日市市の広報活動が充実していた
o 広報誌、番組(ケーブルテレビ、ラジオ)、SNSと多岐に渡る

研究成果
• 博士論文執筆中:『ケーブルテレビを介した自治体広報の伝播経路と高齢者の口コミ効果に関する研究』

研究の問い
1. ICT化は高齢者の生活にどれほど役立っているのか
2.これまでの生活様式を変える必要がなければ新たな道具も必要ないのではないか
3.デジタル機器には置き換えられない情報入手ルートが高齢者にはあるのではないか
4. 高齢者の情報格差解消の手がかりは地域との関わりの中にあるのではないか
• 仮説:『高齢者はデジタル機器に依存せずとも情報を共有し合う独自の機能を有しており、
    ケーブルテレビの広報番組が媒介となりその機能が誘発されている』

自治体広報とPESO
• Owned Media(所有するメディア)
o 広報紙/広報番組(ケーブルテレビ)/公式ホームページ
• Shared Media(共有するメディア)

o SNS
• 広報媒体の住民利用率:市政アンケート報告書より43例抽出及び分析
o 結果:平均77.9%が広報紙から行政情報入手媒体と回答
o 横須賀市 市政アンケート 
 対象:10代~80代
 10代 1位 口コミ 2位 SNS
 20代~30代 広報よこすか(広報紙)
 40代以降 紙媒体の順位が高い(タウン誌、フリーペーパーなど)

o テレビ広報(オウンドメディア)
住民の平均利用率11.4%

ケーブルテレビの概観
• テレビ電波の届かない山岳地帯などに情報を届けるために山頂に
 共同アンテナが設置されたことが始まり(旧:CATV)
• 空きチャンネルで自主製作番組を放送
• 地域独自の情報と親しみが評価されている
• 2021年度時点464社 158社(自治体)203(自治体+民間)

パブリック・アクセス・チャンネル
• アメリカでは制度化され、放送に対して地域住民が参加・関与する
• 日本では「住民参加型番組」という表現に留まる

番組への住民参加
• 市民リポーター(ガイド役)と住民ディレクター(制作スタッフ)
• 自主制作に関わる住民=自治体との協働関係を構築する社会関係資本
 自治体情報を住民に伝える役割をも担う

ケーブルテレビとの親和性
• パブリック・リレーションズ(自治体広報) x パブリック・アクセス(住民の自主放送への参加・関与)
┗自治体とケーブルテレビの親和性向上
• ケーブルテレビの社会的機能を評価し自治体広報に積極的に活用
┗パブリック・リレーションズの目的達成手段の一つ

高齢者口コミ機能
• 元来の口コミ:地域住民同士の情報共有
• 町内会などの組織活動の中で必要な情報の共有、伝播していると考えられる
• 信頼度=情報の伝播の浸透性
• 「なくても困らない」を理由に十分に活用されていない

研究結果と考察と参加者からの議論
• 利用者同士の「身近な情報」の共有=ケーブルテレビ発の情報も含む
• 口コミを媒介とした行動変容が起きてた
• 市民リポーターの存在も情報の橋渡しの役割を担っていた
• 高齢者への情報伝達をメディアのみで補うことには限界がある
o 情報がターゲットに伝達したかどうかを図ることは困難
• 口コミの相互扶助機能に期待
┗デジタルデバイド対策
• 口コミと市民リポーター両者を活用する施策が自治体広報に必要
• 新たな情報伝達経路の構築も注力すべき

■ 7月定例開催:7月31日月曜日オンライン開催18時より

(田代 順)