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日本広報学会賞 他

2018年度(第13回)日本広報学会賞決定
2018年度は13回となるが、本学会会員が2017年4月1日から2018年3月31日までに公刊した図書・論文で自薦、他薦で応募した作品に加えて『広報研究』第22号収録の論文を候補作品とした結果、今年度の日本広報学会賞には自薦他薦を含め、図書1点、論文6点の応募があった。
うち論文1点については、応募条件である「2018年3月31日までに公表された」と認めがたいことから、応募資格を満たしていないとして審査対象から除外し、図書1点、論文5点を対象に審査を行った。
前年度の対象作品が図書6点、論文10点であったことを考えると、本年度は数的には低調な水準にとどまった。

応募作品の研究テーマは広報の社会的役割の拡大を反映してか広範にわたっている。研究の中間報告レベルにとどまり結論が曖昧なものも見られたが、それだけに来年度以降の研究の一層の進展に期待したい。
審査にあたっては委員がそれぞれの作品について評価表を作成したうえ、9月26日に委員全員の出席のもと審査委員会を開催し慎重に審議を行った。その結果2018年度日本広報学会賞を下記の作品に授与したいとの結論を得た。

■2018年度 第13回日本広報学会賞 審査結果
・学術貢献賞:該当作品なし
・優秀研究奨励賞:該当作品なし
・研究奨励賞:
[論文]吉野ヒロ子、小山晋一、高田倫子著
ネット「炎上」における情報・感情拡散の特徴
―Twitterへの投稿データの内容分析から―
(「広報研究」第22号2018年3月)
・教育・実践貢献賞:該当作品なし

2018年度 第13回日本広報学会賞 受賞作品の講評
■研究奨励賞講評
□ネット「炎上」における情報・感情拡散の特徴
―Twitterへの投稿データの内容分析から―
筆者のグループはかねてより、ネット炎上について精力的な研究を進めている。本論作では、PCデポとラーメン二郎仙台店の2つの事例でのTwitter投稿を取り上げ、投稿内容とリツイートの関係について検討を行っている。
この論文独自の視点は、膨大な投稿をテキストマイニングにかけ、投稿意図や使用する用語から「攻撃的投稿」と「批判的投稿」に分けて分析したところであろう。また、投稿に含まれるURLの分析から、マスメディアやネットメディア等他の情報源との関係で情報拡散構造の一端も明らかになる。
その結果、批判的投稿はリツイートされやすいが、攻撃的なものはリツイートされにくいという知見が浮かび上がってきた。論文タイトルに「情報・感情拡散の特徴」とあるが、攻撃的感情は拡散されにくいということだろう。
本論文では、オウンドメディアの告知は拡散されにくい、ファン層を構築していくことが炎上の緩衝となりうる等、実務に有益な視点の目配りも怠りない。
本論文で取り上げた事例は2件にとどまっているが、今後さまざまなタイプの事例やTwitter以外のソーシャルメディアの検討を積み上げていくことにより、今回の結論の精緻化一般化を進めてほしい。

2017年度(第12回)日本広報学会賞決定
2017年度は第12回となるが、本学会会員が2016年4月1日から2017年3月31日までに公刊した図書・論文で自薦、他薦で応募した作品に加えて『広報研究』第20号収録の論文を候補作品とした結果、図書6点、論文10点を選考対象とすることにした。なお、募集の締め切り日は2017年6月20日である。

2017年度学会賞審査委員会は、第1回委員会を7月13日に開催し、昨年度同様の審査方針にて選考することとして作品の読み込みに入った。第2回委員会を10月16日に開催し、各委員が個別に提出した評価表に基づいて慎重に審議を行い、以下の通りに決定した。理事会の承認を経て、11月18日の第23回研究発表全国大会の冒頭で発表し受賞者の表彰を行った。

■2017年度 第12回日本広報学会賞審査結果
・学術貢献賞:[著書]河炅珍著「パブリック・リレーションズの歴史社会学
    -アメリカと日本における<企業自我>の構築」
(岩波書店 2017年1月25日)
・優秀研究奨励賞:該当作品なし
・研究奨励賞:[論文]国枝智樹著「世界の広報史と日本 -比較広報史研究の知見と意義」
(「広報研究」第21号2017年3月)
[論文]榊原康貴著「箱根駅伝優勝による大学評価への影響について
    -世間の誤解と広報視点からの課題」
(「広報研究」第21号2017年3月)
・教育・実践貢献賞:[著書]河西仁著 「アイビー・リー -世界初の広報・PR業務」
     (同友館 2016年10月30日)

2017年度 第12回日本広報学会賞 受賞作品の講評
■学術貢献賞講評
□河炅珍著「パブリック・リレーションズの歴史社会学 -アメリカと日本における<企業自我>の構築」
本書は、PRが広告やプロパガンダと異なり他者との双方向の関係性を内包していることに注目し、PR主体が外部や組織内部の他者とのコミュニケーションにより、<企業自我>を発見し法人格を形成すると主張している。
三部から構成される本書は社会学の視点に立ち、第一部で理論的考察を行った後、第二部において、20世紀前半のアメリカにおける発展のプロセスを考察し、第三部では戦後日本でのPRの歴史を跡付ける中から、広告やプロパガンダに先立ち独自の領域として発展したアメリカと、GHQ等により導入されたもののマーケティングの下位機能として扱われてきた日本のPRの違いが浮かび上がってくる。
国内外の膨大な資料を<企業自我>の概念を手がかりにスタディしまとめ上げた力量は圧倒的であり、知的興奮を与えてくれる。PRの定義については多様な見解がありうるが、その一つの視点として充分に学際的議論のテーマとなりうるだろう。
惜しむらくは、戦後の導入期に続く日本企業にとってのPRの検討が東電を巡るPR映画とPR誌の分析にとどまっている。高度成長前期には多様なPR活動が展開されるし、更に時代を下ればCI計画等著者の主張を補強しうる様々な動きも存在している。今後のより広範な検討を期待したい。
いずれにせよ、学術貢献賞に求められる「広報および隣接諸科学の研究において顕著な貢献があると認められた作品」と評価できる。久しぶりの学術貢献賞の登場を喜びたい。

■研究奨励賞講評
□国枝智樹著「世界の広報史と日本 -比較広報史研究の知見と意義」
世界各国における広報史の研究は自国とアメリカの記述にとどまり、国際的広がりは認めがたかった。昨今、多くの国の広報史を横並びに比較研究しようとの動きがイギリスを中心に広がりつつある。
本作品は、この動きを継続的にウォッチングしている筆者が、現時点での知見を平明にまとめたものである。
引用文献の広がりが一部に限られ、日本の広報史についての独自の見解に乏しいこと等の課題を抱えているが、今後の一層の研究の深化を期待したい。
□榊原康貴著「箱根駅伝優勝による大学評価への影響について-世間の誤解と広報視点からの課題」
大学スポーツが受験志願者の増減にいかなる影響を与えるかを、箱根駅伝の事例に基づき検討している。一般的な予想と異なり、駅伝の優勝は志願者増加に結びつかず、むしろ学部開設等の教育改革の影響が大きいという結論であった。
筆者は大学での広報実務に携わっており、学内向けレポートという性格も併せ持っていると思われるが、データを丁寧に取り扱っており、論理的にも破綻がない。
当学会では実務と研究の融合を標榜しているが、本作品はその好事例とみなすことができよう。
本作品は、駅伝の優勝と志願者増減に焦点を当てているが、スポーツ庁や経済産業省が大学スポーツの見直しをすすめる中、大学ブランド価値を高め、内部のロイヤリティやプライドを向上させるなど他の効果も期待できよう。
今後の幅広い研究を期待したい。

■教育・実践貢献賞講評
□河西仁著 「アイビー・リー -世界初の広報・PR業務」
アイビー・リーはPRエージェンシーの先駆者として知られている割には、その業績の詳細に触れる機会は少ない。本書はリーの人物像と活動を平易に描いており、特に広報初学者にとって親しみやすくわかりやすいと思われる。
単なる評伝にとどまらず、現在の文脈でリーの生涯を見つめ直したところに本書の特色がある。ステルス・マーケティングなど今日のPRが抱える課題が当時も同様に課題であったことも明らかになってくる。またナチスドイツとの関係などネガティブな側面も扱っていることにより、バランスの良い作品に仕上がっている。

2016年度(第11回)日本広報学会賞決定
2016年度は第11回となるが、本学会会員が2015年4月1日から2016年3月31日までに公刊した図書・論文で自薦、他薦で応募した作品に加えて『広報研究』第20号収録の論文を候補作品とした結果、図書2点、論文10点を選考対象とすることにした。なお、募集の締め切り日は2016年6月20日である。

2016年度学会賞審査委員会は、第1回委員会を7月12日に開催し、昨年度同様の審査方針にて選考することとして作品の読み込みに入った。第2回委員会を9月16日に開催し、各委員が個別に提出した評価表に基づいて慎重に審議を行い、以下の通りに決定した。理事会の承認を経て、10月29日の第22回研究発表大会の冒頭で発表し受賞者の表彰を行った。

■2016年度 第11回日本広報学会賞審査結果
学術貢献賞:該当作品なし
優秀研究奨励賞:該当作品なし
研究奨励賞:
[論文]和田仁著「パブリック・ディプロマシーと軍のパブリックアフェアーズ      -2011年東日本大震災時のトモダチ作戦の事例研究―」
(「広報研究」第20号2016年3月)
[論文]大知正直・長濱憲・榊剛史・森純一郎・坂田一郎著「口コミ指数による事例類型化に基づく複数メディアのヒット前の露出を先行指標とした情報拡散過程の分析」
(「広報研究」第20号2016年3月)
教育・実践貢献賞:
[著書]清水正道監修
三浦健太郎・阪井完二・黒田明彦・北見幸一・末次祥行・戸上摩貴子著 『戦略思考の広報マネジメント』
(日経BPコンサルティング2015年4月)


2016年度 第11回日本広報学会賞 受賞作品の講評

■研究奨励賞
□和田仁著「パブリック・ディプロマシーと軍のパブリックアフェアーズ-2011年東日本大震災時のトモダチ作戦の事例研究―」(「広報研究」第20号2016年3月)

パブリック・ディプロマシーやパブリックアフェアーズは、これまで当学会での研究の蓄積の希薄な領域である。
本論文は先行文献を丹念に検証し、広報の領域を超え、多面的視点から整理した部分が大いに評価できる。また、軍隊というハードパワーを代表する存在のもつソフトパワーとしての側面に焦点を当てたことは、イラクや南スーダンなどの自衛隊の海外活動にとっても大いに示唆に富む視点であり、問題提起として新鮮に感じられた。
後半部において米軍のトモダチ作戦の事例を取り扱っているが、丹念な基礎資料の収集に基づく分析は評価できるものの、理論の一般化という点で今一歩の踏み込みが欲しかった。

□大知正直・長濱憲・榊剛史・森純一郎・坂田一郎著「口コミ指数による事例類型化に基づく複数メディアのヒット前の露出を先行指標とした情報拡散過程の分析」 (「広報研究」第20号2016年3月)

口コミ指数という新たな概念を使い、SNS時代の情報拡散を定量的に分析し、口コミと売り上げとの関係を明らかにしようとの論文である。この領域はこれまで定性的に取り上げられることが多かったが、本論文は本格的な統計分析手法を駆使しており、サンプルの取り方も限定条件をおさえ、論文としての完成度も高い。
取り扱ったメディアは一部にとどまっており、研究途上の報告の域にとどまっているものの、当学会でもこのようなアプローチが今後さらに充実すべきとの観点から、その将来性を評価し、今後の積み上げを期待して奨励の意味で受賞作とした。
タイトルのわかりにくさ、論述の難解さが見られる、平易に表現することに努力してほしい。

■教育・実践貢献賞講評
□企業広報戦略研究所著『戦略思考の広報マネジメント』(日経BPコンサルティング2015年4月)

企業の広報力を8つの指標から「オクトパスモデル」として評価する独自のアプローチの概要を紹介しつつ、実務家のインタビューを通じ、企業広報の現状を要領よく説明している。読みやすくまとまっており、新任広報担当や学生に興味をもってわかりやすく理解を促す入門書の役割を担っている。また、広報担当者が自社の広報力についてその特質を把握するガイドとしても役立つと思われる。
オクトパスモデルについては、実務への効果に期待する一方、アカデミックな研究の成果というより、実務経験に基づく項目出しによって得られたものではないかとの意見もある。今後、先行研究との比較や統計に基づく検証などを通じより精緻に説得力を磨き上げることを期待したい。
2015年度(第10回)日本広報学会賞決定
2015年度は、本学会会員が2014年4月1日から2015年3月31日までに公刊した図書・論文で自薦、他薦で応募した作品に加えて『広報研究』第19号収録の論文を候補作品とした結果、図書1点、論文8点を選考対象とすることにした。なお募集の締め切り日は2015年6月15日である。

2015年度学会賞審査委員会は、第1回委員会を6月30日開催し、昨年度同様の審査方針にて選考することとして作品の読み込みに入った。第2回委員会は8月26日に開催し、各委員が個別に提出した評価表に基づいて審査を行ったが、評価が分かれた作品もあり慎重に審議を行った。
審議結果は理事会の承認を経て以下の通りに決定するとともに、9月11日の第21回研究発表全国大会の冒頭で発表し受賞者の表彰を行った。

■2015年度 第10回日本広報学会賞審査結果
学術貢献賞:該当作品なし
優秀研究奨励賞:該当作品なし
研究奨励賞:
[論文]野口将輝著「佐賀県武雄市と北海道小樽市のFacebook広報との比較研究」
(「広報研究」第19号2015年3月)
教育・実践貢献賞:
[著書]伊吹勇亮・川北眞紀子・北見幸一・関谷直也・薗部靖史著
『広報・PR論 パブリック・リレーションズの理論と実際』
(有斐閣2014年9月)


2015年度 第10回日本広報学会賞 受賞作品の講評

□野口将輝著「佐賀県武雄市と北海道小樽市のFacebook広報の比較研究」(「広報研究」第19号2015年3月)
近年、活発化している行政広報におけるFacebook利用について、「シビックプライド」という概念を新たに援用しつつ、ソーシャルメディアの可能性について論じ、さらに地域における統治パフォーマンスに関する理論につなげて分析している点は大いに評価したい。
本論文に関してとくに注目したのは、2014年度研究奨励賞を受賞した伊藤直哉氏の論文「自治体広報をどのように行うべきかー佐賀県武雄市のFacebook広報評価を中心として」において採用された設問の「シビックパワー」と「シビックプライド」についての認識が混在している点に着目して指標を再構成し、「シビックパワー指数」を作成して武雄市の調査結果を再分析したプロセスであり、それをベースに市民の意識・行動の変化ならびにメディア効果の測定を試みている点であった。さらに新たに、Facebookの一般的活用を行っている小樽市を調査対象に加え、この2市を広報視点から比較分析するという研究手法についてであった。
この点ではとくに、伊藤氏論文でも採用された武雄市データを再分析するという点に関して、同一データを活用した研究に再び賞を与えることの是非を問う意見もあった。しかし同一データであってもそれぞれの視点から分析することは、従来から様々な研究分野で行われてきたことであり、新しい視点や切り口での分析・研究が行われている限りにおいて、新たな研究として認められている点を考慮し、授賞を排除するものではないという結論に達した。
また本論文が指摘している、パットナムが提起した社会関係資本モデルが、統治パフォーマンスにどのように寄与するかについては、多くの研究が待たれるところであるが、今回の実証調査でその可能性の萌芽が示されていることは誠に意義が深いと考える。ただ本論文自体は、シビックプライド゙が社会関係資本へどの程度寄与するのか、その入口での問題提起である。論文中でも自ら指摘されているが、「Facebookページ活用の程度」という独立変数と、「社会関係資本」「シビックプライド」「シビックパワー」を従属変数として分析が行われているが、その関係性については逆方向であるという可能性も指摘されており、この点について引き続き研究を進められることを期待したい。
これらの要素を考慮した上で論文の内容を精査した結果、野口氏の研究は研究奨励賞にふさわしいという結論に達した。

□伊吹勇亮・川北眞紀子・北見幸一・関谷直也・薗部靖史著『広報・PR論 パブリック・リレーションズの理論と実際』(有斐閣2014年9月)

本作品は、第1部において、一般にも理解しやすい広告・宣伝販促活動と広報・PR活動との違いを定義のみならず歴史的事実を通じて明らかにし、この活動の前提となるステークホルダーとの対応や組織の社会的責任の位置づけ、組織のレピュテーション構築の課題など、組織(企業)経営における位置づけを記述している。その上で、広報・PR組織と人材、業務構造、実務の枠組みについても触れている。インターネットやIR、社会貢献、災害時などの諸課題に対する広報実務について記述している点も評価できる。とくに災害広報は執筆者の専門領域にも関わる内容であり新規性は高い。
また実用的な面でも、全体が15章で構成されており、大学の授業回数にも対応しているほか、各章の冒頭に身近な話題・事例を配置して関心を高める工夫や、各章末に課題やブックガイドを置いてより深い学習にも活用できるようにしている。
すでに本著は、京都産業大学、埼玉大学、大正大学、東洋大学、南山大学、立教大学大学院をはじめとする多くの大学の教科書としてすでに採用されている実績もあり、広報教育への貢献度は高いと言える。広報・PRを初めて学ぼうという初学者だけでなく、改めて学び直そうという実務者にも有用な刊行物である。
実務家向けのテキストはすでに日本パブリックリレーションズ協会などからも刊行されているが、大学教育向けのテキストはこれまでほとんど刊行されてきておらず新著が待たれていたところでもあり、各分野に比較的バランス良く触れられている点も含めて、教育・実践貢献賞にふさわしい作品であると評価できる。
ただ惜しむらくはグローバル広報や広報倫理、コーポレート・ガバナンスなどの現代的課題と広報・PRとの関係について十分検討されていないように思われる。これらの点についても、今後ぜひ考慮いただくよう期待したい。
2014年度(第9回)日本広報学会賞決定
2014年度(第9回)日本広報学会賞は、9月5日に審査委員会(委員長 宮部 潤一郎)を開催し、学会賞授与に関する審査を行い、以下の通り受賞作を選出した。
同学会賞は、第20回研究発表全国大会(10月18日、19日 於東海大学)の第1日目冒頭に清水学会理事長から発表され、表彰が行われました。

審査対象
本学会会員が、2013年4月1日から2014年3月31日までに公刊した図書・論文で自薦、他薦によるもの、および『広報研究』第18号収録の論文を対象とした結果、図書2点、論文7点、計9点の応募がありました。部門別の応募は以下の通りです。
・学術貢献賞への応募 1点
・優秀研究奨励賞への応募 1点
・研究奨励賞への応募 7点
・教育・実践貢献賞への応募 2点
(複数の部門に応募した作品があるため、応募作品数と部門別応募作品数は一致しない。)

審査結果
学術貢献賞:該当作なし
優秀研究奨励賞:該当作なし
研究奨励賞:次の2作品とする
[論文] 須田比奈子著「広報研究の発展におけるエクセレンス理論の貢献」、広報研究第18号2014年3月
[論文] 伊藤直哉著「自治体広報測定をどのように行うべきか ―佐賀県武雄市のFacebook広報評価を中心として―」、広報研究第18号2014年3月
教育・実践貢献賞:該当作なし

第9回日本広報学会賞受賞作品の講評
日本広報学会賞審査委員会

今年度の応募作の中には他にも意欲的な論考が存在したが、慎重な審議の結果授賞のレベルに達しないと判断された。しかし、対象となったすべての作品の執筆者各位の広報研究に向ける努力に敬意を表するとともに、更なる研鑽を積まれ高い水準の研究成果を目指されることを期待したい。

受賞作の講評
須田比奈子著「広報研究の発展におけるエクセレンス理論の貢献」、広報研究第18号2014年3月
須田氏の論文は、James Grunig等による「エクセレンス理論」の生成、発展、応用に関して包括的にこれまでの研究を整理し、体系的にまとめたものである。
パブリック・リレーションズ活動の理想的なモデルといえば、「対称型双方向コミュニケーション」であり、わが国でも広報・PRに関連した多くの文献で紹介され、広報関係者の間では広く知られている。多くの広報・PR関係者の広報観はエクセレンス理論に基づくものであり、その広報・PR関係者に対するエクセレンス理論による影響は、わが国では支配的であると思われる。それにもかかわらず、エクセレンス理論をめぐる多様な議論、その意義と限界、今後の発展方向について紹介する文献等は、日本では極めて少ないというのが現状であろう。本論文は、エクセレンス理論をめぐる議論、意義や限界、今後の研究方向や課題について、様々な文献を通じて丹念に整理した貴重な成果と認められる。
本論文は、クライシスマネジメントやレピュテーション研究分野はもちろん、国際比較研究に取り組むに際しても有益な示唆を与え得るものであると思われる。また、最終節(まとめ)により、この分野に詳しくない読者にも結論がはっきりと提示されており、それぞれの読者の今後の研究活動に何らかの示唆を与えるものと推察される。
全体に生硬さは否めないが、全体像をとらえ、丁寧な論証を行っていることは好感がもて、十分に研究奨励賞に値する論文と認められる。各審査委員の評価でも他に抜きん出た評価を得ており、多くの議論を要さずに研究奨励賞の授賞を決定した。

伊藤直哉著「自治体広報測定をどのように行うべきか ―佐賀県武雄市のFacebook広報評価を中心として―」、広報研究第18号2014年3月
伊藤氏の論文は、武雄市のフェイスブック広報評価を題材として、広報評価段階を整理し、ソーシャルキャピタル概念と接続したうえで、武雄市の広報評価のためのモデルと戦略を示している。従来の広報評価に関する理論を整理した上で評価モデルを作成し、地方自治体広報の評価設計を行った上で調査を行い、その結果の解析を広報戦略に策定に生かそうという、実践的な姿勢が見られる論文である。
広報・PRの世界で大きな課題となっている効果測定の手法に新たなアプローチを提案する論文として評価できるが、実証研究の対象となった武雄市のFacebook利用方針は自治体の中でもかなり特異な事例なので、ごく一般的な市町村において同様の結果が出るのかどうか、また、ここで提示されている3段階モデルに基づく評価をどのように行うべきものか明確な提示がないなどの指摘がなされた。しかし、ここで提示されているモデルは自治体広報の観点から見ると意欲的であり、今後の研究の深化を期待できるものとの評価から、研究奨励賞に相応しい論文と認められた。
Facebookを積極的に導入した武雄市のケースにとどまることなく、多様な自治体に適用できる効果測定の一般的な手法の開発を行うなど、今後の研究の発展を期待したい。
2013年度(第8回)日本広報学会賞決定
2013年度(第8回)日本広報学会賞は、9月5日に審査委員会(委員長 宮部 潤一郎)を開催し、学会賞授与に関する審査を行い、以下の通り受賞作を選出した。
同学会賞は、第19回研究発表大会(10月5日、6日 於東洋大学)の第1日目冒頭に宮部同賞審査委員長から発表され、表彰が行われました。

審査対象
本学会会員が、2012年4月1日から2013年3月31日までに公刊した図書・論文で自薦、他薦によるもの、および『広報研究』第17号収録の論文を対象とした結果、図書1点、論文7点、計8点の応募がありました。部門別の応募は以下の通りです。
・学術貢献賞への応募 1点 
・優秀研究奨励賞への応募 1点
・研究奨励賞への応募 7点  
・教育・実践貢献賞への応募 1点
(複数の部門に応募した作品があるため、応募作品数と部門別応募作品数は一致しない。)

審査結果
学術貢献賞:該当作なし
優秀研究奨励賞:該当作なし
研究奨励賞:次の2作品とする
[論文] 国枝智樹著「東京の広報前史−戦前、戦中における自治体広報の変遷−」、広報研究第17号2012年3月
[論文] 櫻井光行著「パブリック・リレーションズ再考のための試論−ハーバーマス等の公共哲学の議論を参考に−」、広報研究第17号2012年3月
教育・実践貢献賞:該当作なし

第8回日本広報学会賞受賞作品の講評
日本広報学会賞審査委員会

今回の応募作の中には高い独自性のあるアイデアに基づく研究や目配りの行き届いた論考など力作が多く、審査委員会では受賞作の絞込みにあたってこれまで以上の時間を要した。対象となった作品の執筆者各位の広報研究に向ける努力に敬意を表するとともに、更なる研鑽を積まれ高い水準の研究成果を目指されることを期待したい。

受賞作の講評
「研究奨励賞」の授賞理由
国枝智樹著「東京の広報前史−戦前、戦中における自治体広報の変遷−」、広報研究第17号2012年3月
国枝氏の論文は、戦前・戦中の東京市における広報・広聴的な活動を、米国のPR発展史研究を念頭に置きつつ、我が国独自の展開を丹念な資料収集と検討から明らかにしたものである。学術性、実証性、独自性といった点から高く評価され、また将来性についての意見の一致もあり、審査委員会委員全員一致で研究奨励賞に値する論文であるとの評価を下した。
わが国の広報が戦後GHQによってもたらされたとの通念に対する異議申し立ては一昨年の教育・実践貢献賞受賞作の「日本の広報・PR100年」等により既に提起されてきてはいるが、本論文は自治体広報について、東京市を対象として綿密な論考を重ねて概ね80年におよぶ行政広報の展開を跡付けている。ここでとくに重要な指摘は、限定的ではあったとしても、江戸期ないしは明治初期から蓄積されてきた広報・広聴の実践の歴史の上に戦前期の活動があり、そこから戦中の厳しい条件下での活動につながったことを示していることである。つまり、戦前からの継続性の上に戦中の活動があり、さらに国枝氏は直接に言及していないが、戦後の、そして現在に至る活動に連なる下地、基盤が長い時間の経過の中で形成されてきたということであろう。この継続性という点に光を当てたところに本論文の意義がある。このような長い時間視野を持つことが、いま大変重要になっているのではないだろうか。
審議の過程では、国枝氏自身が認識している通り東京市の事例研究であり、これをもって日本の自治体広報一般の歴史とすることはできない、また、文章表現にもう一段の工夫が欲しい、といった意見が出された。ただ、これらの点を考慮してもなお本論文は十分に研究奨励賞に値すると判断された。
いずれにしても、広報史研究に新たなページを開くものであり、地道に歴史研究に取り組む若い研究者の出現を喜びたい。国枝氏には今後、さらなる研究の展開を期待したい。

「研究奨励賞」の授賞理由
櫻井光行著「パブリック・リレーションズ再考のための試論−ハーバーマス等の公共哲学の議論を参考に−」、広報研究第17号2012年3月
櫻井氏の論文は、パブリック・リレーションズの本源的な目的・意味を問い直すもので、ハーバーマスの公共性、公共圏の議論やコミュニケーション的合意性の議論に依拠しつつ、パブリックとリレーションに分解したうえでそれぞれの意味を考察している。このような考察から広報の目的や価値を問い直し、論考の結論として「広報は公共領域における相互理解を目標とするコミュニケーションと位置づけることができる」との結論を導いている。櫻井氏の文献読み込みや理論構築に向ける真摯な研究態度は評価に値するものであり、理論研究として学会賞にふさわしい水準にあるとして、審査委員会委員全員一致で、研究奨励賞に該当する論文であるとの評価を下した。
いま広報の目的や価値を問い直す必要があるとの問題意識は、櫻井氏の実務家としての業務の中で醸成されたのであろうと思われる。東日本大震災後の広報活動の現状や広報と広告のボーダーレス化といった問題意識の背景にある現状認識は、真摯な実務家の声として傾聴に値すると思われる。
審議の過程で、櫻井氏の理論研究に対する姿勢を評価しつつもなお論理性や独自性を研鑽することで学術性を高めていかれることを期待するとの意見があった。
ここでは実務家がこのような理論研究に果敢に挑戦したことを評価し、アカデミックな研究者に奮起を促しておきたい。
2012年度(第7回)日本広報学会賞決定
2012年度(第7回)日本広報学会賞は、9月6日に審査委員会(委員長 菅原正博)を開催し、9月11日開催の第70回理事会の承認を得て、下記の通り決定いたしました。
同学会賞は、第18回研究発表大会(10月6日、7日 於同志社大学新町キャンパス)の第1日目冒頭に菅原同賞審査委員長から発表され、表彰が行われました。

審査対象
本学会会員が、2011年4月1日から2012年3月31日までに公刊した図書・論文で自薦、他薦によるもの、および『広報研究』第16号収録の論文を対象とした結果、図書1点、論文5点、計6点の応募がありました。部門別の応募は以下の通りです。
・学術貢献賞への応募 1点
・優秀研究奨励賞への応募 1点
・研究奨励賞への応募 5点
・教育・実践貢献賞への応募 1点
(複数の部門に応募した作品があるため、応募作品数と部門別の応募作品数は一致しません。)

審査結果
教育・実践貢献賞 藤代 裕之著(図書)『発信力の鍛え方 ソーシャルメディア活用術』
(2011年9月刊、PHP研究所)
研究奨励賞 伊藤 直哉著(論文)『東日本大震災における生活者の情報行動とリスク認知
—リスク・コミュニケーションのための実証的基礎研究—』
(2012年3月刊、日本広報学会『広報研究』第16号)

和田 仁著(論文)『福島原発事故からの広報倫理とプロフェッショナリズム再興に向けて— 社会的批判・疑念に応える試論 —』
(2012年3月刊、日本広報学会『広報研究』第16号)
学術貢献賞 該当なし
優秀研究奨励賞 該当なし

2012年9月6日に、学会賞審査委員会が開催され、本年度の学会賞の審議を行いました。本年度は、A.学術貢献賞1件、優秀研究奨励賞1件、研究奨励賞5件、B.教育・実践貢献賞1件の応募がありました。審議の結果、以下のように3件を賞の該当者として選出しました。

第7回日本広報学会受賞作品の講評(文中敬称略)
日本広報学会賞審査委員会

「研究奨励賞」の受賞理由
1)著者 和田 仁
福島原発事故からの広報倫理とプロフェッショナリズム再興に向けて
— 社会的批判・疑念に応える試論 —
選出の理由として、本研究は福島原発事故発生における報道活動に対して広報倫理のあり方について、詳細な実証データを駆使して、建設的な社会批判の目を持つ重要性を論述している点が、学術性、実証性および学際性の基準を満たしている、ということで「研究奨励賞」に値すると判断しました。
ただ原発事故という緊急時における実証性だけでは、時間が経過するにつれて真相が次第に風化していく危険性があるので、福島原発事故以外にも通用するような広報倫理とプロフェッショナルな視点の理論的枠組み作りに継続して取り組んでいただくことにより、クライシス・マネジメントにおける広報倫理論の確立に寄与すると思われますので、今後の研究成果に期待したいと思う次第です。

2)著者 伊藤 直哉
東日本大震災における生活者の情報行動とリスク認知
—リスク・コミュニケーションのための実証的基礎研究—
選出の理由として、本研究は東北大震災勃発後の直近のデータを多面的に解析している点が学術性、実証性という面で優れていると高く評価し、「研究奨励賞」に値すると判断しました。特に広報研究における定量的な実証研究として模範的な研究に値するという評価をいただきました。ただこの実証的研究を引き続き積み重ねていく上において、「東日本大震災」に匹敵するような事件が再来することが難しいので、生活者の情報行動とリスク認知の相関関係を実証できるデータの入手が困難ではないかという指摘もあり、その点をどう考えるかという点についての見解を明確にするということも含めて、この研究を基盤にして今後の広報活動のリスク・コミュニケーションのあり方についてどのように研究を深めていくのかという点について明確にしていただきたいと期待する次第です。

「教育・実践貢献賞」受賞理由
著者 藤代 裕之
「発信力の鍛え方 ソーシャルメディア活用術」
選出の理由として、最近広報研究で注目されているソーシャルメディア問題を、情報発信力という立場で、実務的能力の向上に役立つように平易に論述しているために、教育・実践への寄与と独自性、文章表現という面で優れているので、「教育・実践貢献賞」に値すると判断しました。特に本研究は、単なるハウツ—本ではなく、思考方法を改善して自ら情報発信力を鍛えるという学習力向上を支援するという点に力点を置いている点を高く評価しました。
ただ、この研究は単なる暗黙知の活用の仕方にとどまらず、知識移転が可能なように、思考法のプロセスをステップ分解して、形式知として広報知識移転に貢献できるような研究に質的に高めていただきたいと期待する次第です。
2011年度(第6回)日本広報学会賞決定
2011年度は学会賞審査委員会の顔触れが大きく変ったため、審査委員会を8月10日と9月15日の2回にわたり開催しました。第1回審査委員会では、審査委員長の互選を行い、菅原正博・宝塚大学教授が委員長に選任され、選考基準の確認を行うとともに、審査スケジュールの検討を行った。その後、各審査委員が全応募作品の査読を行い、第2回委員会にその査読結果をもちより、慎重審議を行って授賞候補作品を選定し、理事会(10月3日)の承認を得て、授賞作品が最終決定しました。例年通り第17回研究発表大会(東京経済大学)の初日である10月22日(土)の冒頭で結果発表と表彰が行われました。

審査対象
2011年度は第6回となるが、本学会会員が2010年4月1日から2011年3月31日までに公刊した図書・論文で自薦、他薦によるもの、および『広報研究』第15号収録の論文を対象に候補作品の募集を行った結果、図書2点、論文3点、計5点の応募がありました。これを部門別にみると以下の通りであった。
・学術貢献賞への応募 1点
・優秀研究奨励賞への応募 1点
・研究奨励賞への応募 3点
・教育・実践貢献賞への応募 2点
(複数の部門に応募した作品があるため、応募作品数と部門別の応募作品数は一致しない。)

審査結果
・学術貢献賞 該当なし
・優秀研究奨励賞 該当なし
・研究奨励賞
〔論文〕吉田 博著
『会社役員の報酬情報の戦略的課題—コーポレート・コミュニケーションの視点からー』
(2011年3月31日発行、京都マネジメント・レビュー第18号所収)
・教育・実践貢献賞
〔図書〕猪狩 誠也編著『日本の広報・PR100年—満鉄からCSRまで』
((株)同友館、2011年3月刊)

第6回日本広報学会賞受賞作品の講評(文中敬称略)
日本広報学会賞審査委員会
「研究奨励賞」の授賞理由
選出の理由として、コーポレート・コミュニケーションの立場から、IRを基盤にしたコーポレート・ガバナンス論を展開している新しい研究であると判断しました。
これまで広報研究では、IRは「投資家」というステークホルダーの1構成メンバーとして扱われてきましたが、IRは単に財務部と投資家の関係性の問題だけではなく、「コーポレート」という経営トップの全社的な戦略的視点を重視すべきである、という本論文の指摘は、戦略的広報が叫ばれている時代に、まことに傾聴に値する研究であります。
ただこの研究をさらに発展させていただくためには、理論的枠組みだけではなく、グローバル競争時代に突入している日本の企業コーポレート・ガバナンス力のあり方について、事例研究を踏まえて、より実証性を深めていただきたい、と念願する次第です。

「教育・実践貢献賞」の授賞理由
本書は、日本の広報の成立面で貴重な歴史的事実を究明しており、今後の広報教育や広報研究の極めて重要な基礎的文献となるものと思われます。本書の前身となった「広報の史的研究会」に参加した共同執筆者とともにその功績を称えます。
しかし、編著も「まえがき」で述べているように、本書は「研究書」としてよりも「教養書」として書かれており、「学術貢献賞」としては、今後本書を基盤とし、これまでの日本の広報実務から直近の日本の広報課題までを展望し、それを踏まえ今後の日本の広報について新たな体系や方向までを提示していただくことを期待します。
2010年度(第5回)日本広報学会賞決定
2010年度(第5回)日本広報学会賞は、10月7日に審査委員会(委員長 上野征洋副会長)を開催し、10月14日開催の第62回理事会の承認を得て、下記の通り決定いたしました。
同学会賞は、第16回研究発表大会(11月6日、7日 於京都産業大学)の第1日目冒頭に上野同賞審査委員長から発表され、表彰が行われました。

審査対象
本学会会員が、2009年4月1日から2010年3月31日までに公刊した図書・論文で自薦、他薦によるもの、および『広報研究』第14号収録の論文を対象とした結果、図書6点、論文5点、計11点の応募がありました。部門別の応募は以下の通りです。
・学術貢献賞への応募 3点
・優秀研究奨励賞への応募 3点
・研究奨励賞への応募 6点
・教育・実践貢献賞への応募 4点
(複数の部門に応募した作品があるため、応募作品数と部門別応募作品数は一致しない。)

審査結果
・学術貢献賞:〔図書〕清水正道著『環境コミュニケーション—2050年に向けた企業のサステナコム戦略』
(同友館 2010年3月刊)
・優秀研究奨励賞:〔図書〕北見幸一著『企業社会関係資本と市場評価—不祥事分析アプローチ—』
(学文社 2010年2月刊)
・教育・実践貢献賞:〔図書〕河井孝仁著『シティプロモーション—地域の魅力を創るしごと—』
(東京法令出版 2009年12月刊)
・研究奨励賞: 該当なし

第5回日本広報学会賞受賞作品の講評 (文中敬称略)
日本広報学会賞審査委員会
「学術貢献賞」の授賞理由
清水正道『環境コミュニケーション--2050年に向けた企業のサステナコム戦略』は筆者が10年以上にわたって取り組んできた成果の集大成であり、社会提言の書であります。
本書の特徴は、内外で高まる地球環境問題、CSR(企業の社会的責任)活動への取り組みをさらに向上させるため、経営戦略を「環境コミュニケーション」の視点から問い直し、「持続可能性」への寄与を推進させようとするところにあります。中・長期的な視点に立ち、企業や社会の営みをコミュニケーションの視点から分析し、志の高い提言に結実させた力量は高く評価されます。
本学会における「学術貢献賞」の審査ガイドラインは「広報及び隣接諸科学の研究において顕著な貢献があると認められた業績」です。審査委員会は、このガイドラインに照らして、本書の「顕著な貢献とは何か」について討論しました。
その結果、本書は「社会的な意義の高さ、時宜にかなった提言内容など、学会の果たすべき社会的役割を担うもの」との結論に達しました。
合わせて、学術的視点からの検証も行ない、「専門用語や概念について、より正確な吟味や整理が必要」との意見もありましたが、「それをふまえてもなお貢献度が高い」と判断されたものです。

「優秀研究奨励賞」の授賞理由
北見幸一『企業社会関係資本と市場評価——不祥事分析アプローチ』は過去15年間に発生した不祥事を分類し、その分析の結果「規範逸脱行動型」の事例が、企業への負の影響が大きいことを論述したもので、クライシス・コミュニケーションの重要性など経営への提言も行なっています。これまでも不祥事に関する事例研究の論稿が多い中で、学術レベルでの分析を行なった点が優れていると評価されました。
本書は経営学の博士論文を基礎にしたもので、表現や論証に生硬さが散見されるものの、「今後、さらに成熟した成果」への期待を込めて高い評価を得ました。
また、企業社会関係資本の構造変化と市場評価との関連においては、分析が不十分との意見もありましたが、「将来的に学会の発展に貢献する」との「優秀研究奨励賞」のガイドラインに照らし期待を込めて授賞作となりました。

「教育・実践貢献賞」の授賞理由
河井孝仁『シティプロモーション——地域の魅力を創るしごと』とは筆者の記述によれば企業マーケティングの手法、そしてマネジメントサイクル、地域ブランドなどの考え方を駆使して、副題が示すように、「地域の魅力を創る」活性化策です。
筆者は、30以上の自治体の取り組みを事例として取り上げ、行政広報やシティセールス活動を総合化した「シティプロモーション」の概念と手法を丹念に説き、平易な記述で説得力のある成果を導き出しています。自治体職員、NPOメンバー、地域の課題に取り組む人々への実践の書として高く評価されました。

今回の三点は、いずれも図書でした。論文においても、注目すべき作品が少なからずありましたが、議論の結果、残念ながら、いずれも学会賞授賞には該当しないと判断されました。次年度も、多くの優れた論文や図書がノミネートされることを期待しております。
(文責:審査委員長 上野征洋)
2009年度(第4回)日本広報学会賞
2009年度(第4回)日本広報学会賞は、2009年11月2日に日本広報学会賞審査委員会を開催し、11月16日開催の第59回理事会の承認を得て、下記の通り決定いたしました。
なお、特別功労賞が、今回限りの措置としてカトリップ・センター・ブルーム共著“Effective Public Relations”の邦訳書「体系パブリック・リレーションズ」の翻訳者8名(いずれも当学会会員)に授与されました。
表彰式は第15回研究発表大会初日の冒頭に行われました。

審査対象
本学会会員が、2008年4月1日から2009年3月31日までに公刊した図書・論文で、自薦、他薦によるもの、および『広報研究』第13号収録の論文を対象とする。
・図書 9点、論文 8点
・学術貢献賞への応募 3点
・優秀研究奨励賞への応募 6点
・研究奨励賞への応募 6点
・教育・実践貢献賞への応募 7点
(複数の部門に応募した作品があるため、応募作品数と部門別の応募作品数は一致しない。)

審査結果
・学術貢献賞 該当なし
・優秀研究奨励賞
〔図書〕関谷直也著『環境広告の心理と戦略』(同友館 2009年3月刊)
・研究奨励賞 該当なし
・教育・実践貢献賞 該当なし
・特別功労賞
〔図書〕『体系パブリック・リレーションズ』の翻訳にあたっての努力に対して
井上邦夫・井之上喬・伊吹勇亮・北村秀実・関谷直也
矢野充彦・皆見剛・五十嵐正毅(ピアソン・エデュケーション 2008年9月刊)
2008年度(第3回)日本広報学会賞
10月6日開催の学会賞審査委員会で第3回日本広報学会賞を選定し10月14日開催の理事会で承認を得ました。表彰式は10月25日(土)北海道大学で開催の第14回研究発表大会席上で行いました。

<審査対象>
本学会会員が、2007年4月1日〜2008年3月31日の間に公刊した図書・論文で、自薦、他薦によるもの、および『広報研究』第12号収録の論文を対象とする。図書3点、論文5点(学術貢献賞への応募 2点、優秀研究奨励賞への応募 1点、研究奨励賞への応募 5点、教育・実践貢献賞への応募 2点)

<審査結果>
・学術貢献賞:該当なし
・優秀研究奨励賞:〔図書〕三島万里著
『広報誌が語る企業像』(日本評論社 2008年3月刊)
・研究奨励賞:〔論文〕北見幸一著
『クライシスコミュニケーション〜近年の危機対応事例からの一考察〜』
(日本広報学会『広報研究』第12号収録 2008年3月刊)
〔論文〕冨田晋司著
『わが国中小企業におけるコーポレート・コミュニケーションの課題』
(『広報研究』第12号収録 2008年3月刊)
・教育・実践貢献賞:〔図書〕東 英弥著
『統合型ブランドコミュニケーション〜マーケティングコミュニケーションの新展開〜』
(早稲田大学出版部 2007年8月刊)
2007年度(第2回)日本広報学会賞
第2回を迎えた2007年度日本広報学会賞は、10月15日に審査委員会を開き最終審査が行われ、理事会の承認を得て、11月17日(土)の第13回研究発表大会の冒頭で結果発表と表彰が行われた。

1.審査対象
本学会会員が、2006年4月1日から2007年3月31日までに公刊した図書・論文で、自薦、他薦によるもの及び『広報研究』第11号所収の論文を対象とする。
・図書 3点、論文 7点
・学術貢献賞への応募 4点 優秀研究奨励賞への応募 7点
・両賞への応募作品1点

2.審査結果
・学術貢献賞:該当なし
・優秀研究奨励賞:該当なし

しかし、審査委員会における選考過程において、審査委員から初年度が「学術貢献賞」は該当作品なし、「優秀研究奨励賞」は1点のみの受賞、第2年目は両賞とも「該当作品なし」では、会員のモチベーションにもかかわる、といって安易に賞を授与することも望ましいことではないとの意見が出され、その取り扱いについて理事長、事務局長の三者で協議を行った。
その結果、今年度に限り「研究奨励賞」を設け、将来、学会の発展に寄与すると思われる作品に授与することとし、「優秀研究奨励賞」の候補となったが、審査委員の票が分散して決定に至らなかった次の3点の作品を授賞対象とすることを決め、理事会に提案し、承認が得られたので、下記の3作品に研究奨励賞を授与することとなった。なお、来年度以降については、「研究奨励賞」を恒常的に設けるか否かも含めて「日本広報学会賞規程」の見直しを審査委員会に諮ることも併せて提案した。

「研究奨励賞」受賞作品
〔論文〕井上邦夫著『敵対的買収時の危機管理コミュニケーション-買収側企業の立場から-』(『広報研究』第11号所収)
〔論文〕石井 智著『スポーツの価値と企業政策—CSRの視点から-』(『同志社政策科学研究』第8巻所収)
〔論文〕井上昌美著『ステークホルダーからの信頼の向上に繋がるCSRコミュニケーションに関する考察』(『広報研究』第11号所収)
2006年度(第1回)日本広報学会賞
1.日本広報学会賞について
日本広報学会賞は、学会設立10周年を記念し2005年に制定された。学会賞には「学術貢献賞」および「優秀研究奨励賞」の二種類があり、前者は、広報および隣接諸科学の研究において貢献があると認められた業績に対し、後者は将来的に学会の発展に貢献すると認められた業績に対し授与されるものであって、主として若手研究者を対象とする。業績は公表された「図書」「論文」により自薦・他薦によるものとする。

2.選考対象作品
広く会員からの他薦及び自薦による会員の著作(公開された図書、論文に限る)『広報研究』第9号および第10号所収の論文について募集を行い、選考委員会による選考を経て、決定した。推薦論文・図書は第1回に限り平成14年、15年の二年間に公刊されたものとした。最終的には「学術貢献賞」に図書6点、「優秀研究奨励賞」に図書3点、論文2点の応募があり、加えて『広報研究』第9号および第10号掲載の論文10点が対象となった。

3.選考結果
・学術貢献賞:該当なし
・優秀研究奨励賞:〔図書〕駒橋恵子著
『報道の経済的影響—市場のゆらぎ増幅効果』(御茶の水書房 2004年5月刊)
第6回オピニオン・ショーケース
オピニオン・ショーケースは、若手・異分野研究者や実務家から今日的課題を巡る問題提起を受け、参加者を交え自由闊達かつ濃密な議論を行おうとするもので、2006年より毎年開催されています。毎年秋に開催される研究発表大会が「研究成果」を発表する場であるのに対し、オピニオン・ショーケースは「問題意識」を投げかけ忌憚なく議論する場として位置づけられます。このため、対象テーマは「研究の緒についたもの」、「研究対象として検討しているもの」、「今後研究対象となりうる事例」など、未完成の領域を含め幅広い分野となっています。
第6回は会場を2つに分け、合計12の発表を行いました。
なお、参加者は発表者を含め63名でした。


■実施概要
日時: 2011年3月9日(水) 13:00〜16:45
場所: 日本教育会館 8階 第二会議室(805・806会議室)
(〒101-0003 東京都千代田区一ツ橋2-6-2 TEL.03-3230-2831(代表))
参加費: 2,000円

■プログラム:
第1会場(13:00〜16:45)
・ 開会の挨拶
1)アテンションの変容による企業コミュニケーションの精緻化とシームレス化
弦間 一雄((株)博報堂)
2)メディアモニタリングと生活者アンケートを融合させた広報効果測定手法の可能性
川合志郎/吉野ヒロ子((株)内外切抜通信社)
3)企業の広報活動の可視化について
細川 一成((株)電通パブリックリレーションズ)
4)首長交代と広聴事業 〜横浜市を事例に
本田 正美(東京大学大学院博士課程)
5)政党の選挙コミュニケーション戦略活動についての考察
高橋 眞人(共同ピーアール(株))
6)自治体議会広報は議会改革においてどのような役割を果たせるのか
金井 茂樹(法政大学大学院博士課程)
・閉会の挨拶

第2会場
・開会の挨拶(13:00〜16:45)
7)パブリックリレーションズと公共哲学
鈴木 幹久(ビルコム(株))
8)企業広報の視点から見た社会福祉領域における広報の現状と課題
北舘 一弥(東京福祉大学大学院博士前期課程)
9)中堅私立文系大学のブランド戦略 〜教育理念に基づく戦略モデルの構築
谷ノ内 識(同志社大学大学院博士前期課程)
10)インターナル・コミュニケーションにおける社内報の位置づけ
伊吹 勇亮(京都産業大学)/川北 眞紀子(中部大学)
11)海外向けコミュニケーション改革 我々の日本はPR鎖国状態から開国できるのか
小林 明央(ビジネスワイヤ・ジャパン(株))
12)報道における不祥事概念の構築 〜91,00,02,07年の不祥事報道を事例として
村上 信夫(立教大学大学院博士課程)
・閉会の挨拶
【コーディネーター】
1〜3 田代 順((株)ミラ・ソル)
4〜6 石川 慶子((有)シン)
7〜9 伊吹 勇亮(京都産業大学)
10〜12 弦間一雄((株)博報堂)
第5回オピニオン・ショーケース
第5回オピニオン・ショーケースは会場を2つに分け、合計9つの発表を行いました。
第1会場では、話題のツイッターを含め、ブランド、CSR、環境など今日的PRテーマをめぐり、各発表者の問題提起を受け、ファシリテーターを交えたディスカッションを行います。
第2会場では、【スポーツとPRに関する今日的課題】、【リスクPRをめぐる今日的課題】と題して、それぞれの課題につき2件の会員発表を行い、その後ファシリテーターを交え、より深いディスカッションを展開いたしました。
なお、参加者は発表者を含め46名でした。

■実施概要
日時: 2010年3月5日(金) 13時30分〜17時
場所: 宝塚造形芸術大学 東京新宿キャンパス
(〒160-0023 東京都新宿区西新宿7丁目11番1号 TEL.03-3367-3411)
参加費: 2,000円

■プログラム
第1会場(13.30〜17:00)
・開会のあいさつ
(1)「Twitterによる口コミ効果、企業広報効果を検討する」加藤恭子((株)ビーコミ)
(2)「「パブリックリレーションズとは何か」 〜誤解を打破し、理解の浸透を図る〜」尾上玲円奈((株)井之上パブリックリレーションズ)
(3)「富山市中心市街地活性化におけるセンターリング理論」長谷川圭((株)フレーズ)
(4)「コーポレートブランドを高めるCSRコミュニケーション〜NPOとの協働とコーポレートブランドへの関係性〜」野村尚克(筑波大学大学院)
(5)「環境コミュニケーションにおける情報の受信と対話」小久保啓((株)オズマピーアール)
・閉会のあいさつと今後に向けて

第2会場(14:20〜16:45)
【スポーツとPRに関する今日的課題】
(6)「ソーシャル・キャピタル醸成手段としてのスポーツの可能性」伊吹勇亮(京都産業大学)、中嶋大輔(同志社大学大学院)
(7)「CSRにおけるトップアスリートの戦力化〜大阪ガス株式会社の事例を中心に〜」石井 智(大阪ガス(株))、伊吹勇亮(京都産業大学)
ディスカッション
【リスクPRをめぐる今日的課題】
(8)「戦略的パブリック・リレーションズマネジメント〜クライシスをオポチュニティに〜」岩城淳子((株)バーソンマーステラ/学習院女子大学)
(9)「1991年論 〜不祥事報道コンテンツの確立〜」村上信夫(立教大学大学院)
ディスカッション
【コーディネーター】
(1)〜(3) 濱田逸郎(江戸川大学)
(4)〜(5) 北村親一((株)博報堂)
(6)〜(7) 田代 順((株)ミラソル)
(8)〜(9) 大森康晴(共同ピーアール(株))